検査内容の説明
血液検査
(貧血)
赤血球・ヘモグロビン・ヘマトクリット
赤血球中のヘモグロビンは酸素を運搬する重要な役割を担っています。ヘマトクリットは血液中の赤血球濃度を表します。いずれも貧血を調べる検査で、鉄分の摂取不足や出血、悪性腫瘍の存在で減少することがあります。
血清鉄(Fe)・TIBC(総鉄結合能)
血液中の鉄分はヘモグロビンの原料となるため、低下すると貧血の原因となります。偏食による鉄分摂取不足や胃切除後の吸収障害、月経過多などでも低下します。TIBCは、鉄と結合できる血中蛋白の総量で貧血や血液疾患などの診断に利用します。
(一般・血液像)
MCV・MCH・MCHC
MCVは1個の赤血球の容積、MCHは1個の赤血球中のヘモグロビン量、MCHCは赤血球内のヘモグロビン濃度を表し、貧血のタイプ・原因を調べるために用います
白血球
白血球は病原体から体を守る役割を持ち、感染症などの炎症性疾患や白血病などの血液疾患で異常値を示します。また、過度の喫煙でも上昇することがあります。喫煙者で白血球が多い方は節煙あるいは禁煙後、再検してください。
血液像
白血球はそれぞれ役割の異なった数種類の細胞から成り、血液像はこれらの内訳を表しています。
Neut(好中球):感染症や急性の炎症で増加し、以下二種類があります。
Stab(桿状核球):幼若な好中球で炎症が強いときに出現します。
Seg(分葉核球):成熟した好中球です。
Lymph(リンパ球):ウィルス感染症などで増加します。
Mono(単球):結核などで増加します。
Eosino(好酸球):アレルギー疾患や寄生虫症などで増加します。
Baso(好塩基球):増加はまれですが、骨髄性白血病などで増加します。
血小板
血小板は血管の損傷部位に付着し、凝集して止血する役割を持っています。減少すると出血傾向、過剰になると血栓形成の原因となります。血液疾患や慢性肝炎、肝硬変の場合に低下することがあります。
(膵機能)
血清アミラーゼ
炭水化物(でんぷん)を分解する消化酵素で、唾液や膵液に含まれます。膵臓、唾液腺の炎症や障害時に上昇します。
リパーゼ
脂肪を分解する消化酵素で、膵臓から分泌されます。膵臓の炎症や障害時に上昇するので、膵炎・膵疾患の補助診断に用います。
尿中アミラーゼ
血清アミラーゼが高値の場合に膵炎に由来するのか、腎不全等による排出低下に由来するのかの判定に用います。
(腎機能)
尿素窒素
腎機能障害時に上昇するほか、高蛋白食や激しい運動、脱水などにより上昇する場合があります。
クレアチニン
不要になった蛋白の最終産物で、腎臓から排出されます。腎機能障害時に上昇します。
eGFR(推定腎糸球体濾過量)
推定腎糸球体濾過量は年齢、性別、血清クレアチニン値から算出される数値で、腎機能障害の指標となります
電解質(Na・K・Cl)
血中に含まれる電解質で腎臓により濃度が一定に維持されています。脱水、下痢、腎機能障害時や利尿剤の服用などで異常値になることがあります。
電解質(Ca, P)
腎不全、副甲状腺機能異常などで異常がみとめられます。
(糖代謝)
血糖
血糖値は、血液内のグルコース(ブドウ糖)濃度であり、体のエネルギー源として大切な役割をしています。主にインスリンというホルモンにより、血糖値は一定の範囲内にコントロールされており空腹時109mg/dl以下が標準です。110mg/dl以上では糖尿病の可能性があり、糖負荷試験による精密検査をする必要があります。
HbA1c (NGSP国際基準)
ブドウ糖と結合した赤血球ヘモグロビンの割合です。過去1~2ヵ月間の平均的血糖値を反映し、糖尿病コントロールの評価に用います。6.5%以上であれば糖尿病と診断します。
(脂質代謝)
総コレステロール
血中に含まれる脂質で、HDLコレステロール(善玉)やLDLコレステロール(悪玉)などの総和を表しています。ホルモンや細胞膜を作るうえで大切なものですが、増えすぎると動脈硬化を進展させる原因となります。
中性脂肪
体内で最も多い脂肪で、糖質がエネルギーとして脂肪に変化したものです。過食過飲や運動不足で上昇し、高い状態が続くと皮下脂肪や内臓脂肪になって体重が増加したり、動脈硬化を進展させたりして、脳梗塞や心筋梗塞の原因になります。
HDLコレステロール
善玉コレステロールといわれるもので血管にたまったコレステロールを肝臓に運び、動脈硬化を予防する働きがあります。運動することで増加し、喫煙で低下します。40mg/dl以上が望ましい値です。
LDLコレステロール
肝臓で合成されたコレストロールを末梢へ輸送する悪玉のコレストロールです。動脈硬化を進行させ脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。140mg/dl未満が望ましい値ですが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や喫煙歴のある方は120mg/dl未満に、狭心症や心筋梗塞の既往のある方は100mg/dl未満にコントロールしてください。
βリポ蛋白
血中脂質の大部分は蛋白質と結合しリポ蛋白として存在します。このうちβグロブリンと結合したβリポ蛋白は脂質の代謝に重要な役割を持っています。βリポ蛋白が多いと動脈硬化が進行し、心筋梗塞の原因などにもなります。
動脈硬化指数
(総コレステロール-HDLコレステロール)÷HDLコレステロールで求められる指数で、数値が高いほど動脈硬化が進行する恐れがあります。
(尿酸)
尿酸
蛋白質の一種であるプリン体が代謝される際に生じるものが尿酸で、飲酒や肉食、腎機能障害時に上昇します。高い状態が続くと、結晶として関節に蓄積して痛風発作と呼ばれる関節痛を起こします。また腎結石の原因になることがあります。
(血清)
CRP
健常人では陰性。感染症や膠原病、悪性疾患で上昇し、治癒すると消失するので、疾患の重症度、病状変化の評価に利用します。
ASO(ASLO)
溶血性連鎖球菌に対する抗体価で、リウマチ熱、猩紅熱、急性糸球体腎炎などで上昇します。溶血性連鎖球菌は常在菌であり病的な感染がない健常人でも、ある程度抗体価を有しています。
RA
リウマチテスト。慢性関節リウマチ、膠原病、肝疾患などで陽性となるほか、健常人でも数%が陽性を示すため、RAのみ陽性でCRP、血沈などの炎症反応が正常であり、関節症状が伴わなければ臨床的に問題はないことが多いです。
TPHA(TP抗体)、RPR
梅毒感染の有無を調べます。治癒しても陰性化はしません。
(血清蛋白)
総蛋白
血液中に含まれる種々の蛋白質の総和で、個人差も大きく、1日のうちでも変動します。肝障害や悪性腫瘍がある場合に低下します。
アルブミン
総蛋白の中で肝臓で作られる主要な蛋白であり、体の各構成要素の原料になります。肝障害時、栄養不良、消化吸収不良、ネフローゼ症候群などで低下します。
A/G比
体の構成要素の原料蛋白であるアルブミンと細菌や異物を排除する抗体蛋白であるグロブリンの比を表します。肝障害、炎症反応や悪性腫瘍が存在するときに低下します。
蛋白分画
総蛋白に含まれるアルブミンと種々の蛋白質の内訳です。γグロブリンは免疫に関係する蛋白です。
(肝機能)
AST(GOT)・ALT(GPT)
いずれも蛋白質の元となるアミノ酸を合成する酵素です。主に肝臓に多く含まれているため、肝機能検査として重要な項目であり、ウィルス性肝炎や、アルコール性肝障害、脂肪肝などで上昇します。また、AST(GOT)は心臓や骨格筋にも存在するため、心筋梗塞や筋肉疾患でも上昇します。
γ-GT(γ-GTP)・LAP・ALP(AL-P)
胆道系の酵素で、肝障害以外に胆石や胆道閉塞性疾患、膵疾患などで上昇します。過飲によるγ-GT(γ-GTP)単独の上昇がある場合は飲酒を控えてください。ALP(AL-P)は骨にも存在するため、骨疾患や悪性腫瘍、妊娠末期で上昇することがあります。
コリンエステラーゼ
肝臓で合成される酵素で、肝臓の蛋白質合成能を反映しています。肝炎や肝硬変、低栄養状態や貧血などで低下しますが、肥満や脂肪肝では上昇することがあります。
総ビリルビン・直接ビリルビン
ビリルビンは胆汁の主成分で、古くなった赤血球が脾臓で分解され、このときにヘモグロビンが変化してできた色素の一種です。肝障害や胆汁の流れを悪くする胆道疾患で上昇すると黄疸(皮膚や眼球の黄染)になります。直接ビリルビンと間接ビリルビンに分けられ、これをみることにより肝障害か胆道閉塞性障害か推測します。
LDH
ブドウ糖がエネルギーに変わる際に働く酵素です。主に肝臓に多く含まれており、肝障害時にAST、ALTとともに上昇します。エネルギーを得るのに重要な酵素で、筋肉や他の臓器にも広く存在するため、肺や心疾患、筋疾患、悪性疾患や激しい運動の直後でも上昇します
(肝炎ウイルス)
HBs抗原(B型肝炎S抗原 HBs-Ag)
HBs抗原が陽性で肝機能が正常の場合、生来のB型肝炎ウィルス保持者で無症状の状態と考えられます。将来B型肝炎を発症する可能性があり、年に1回は肝機能の経過観察が必要です。
HBs抗体(B型肝炎S抗体 HBs-Ab)
HBs抗原が陰性でHBs抗体が陽性の場合、B型肝炎ウイルスに感染後、治癒したことを示しており、臨床的に問題はありません。
HCV抗体(C型肝炎抗体)
HCV抗体陽性の場合、C型肝炎ウィルスに感染している可能性があります。現在無症状でも将来活動性慢性肝炎や肝硬変に進行することがありますので、専門医にご相談ください。
HA抗体(A型肝炎抗体)
HA抗体陽性の場合、A型肝炎ウィルスに感染後、治癒したことを示しており、臨床的に問題ありません。
(腫瘍マーカー)
種々の悪性腫瘍の存在で出現する蛋白質や抗原を調べます。健常人でも異常値を示すことがありますが、陽性と判定された場合は定期的に経過観察するか、一歩進んだ検査をする必要があります
CEA
主に、大腸・胃などの消化器癌、肺癌で上昇します。また、喫煙の影響でも上昇するので、喫煙者で陽性の方は、節煙後、再検査をして値が低下することを確認する必要があります。
AFP
原発性肝臓癌で上昇します。慢性肝炎、肝硬変のある場合は、定期的にAFPの経過観察をするとともに、腹部超音波検査で肝腫瘍の存在をチェックする必要があります。
エラスターゼⅠ
膵臓癌、膵炎で上昇します。
SCC抗原
食道、肺、尿路系、子宮頸膣部、皮膚、などの扁平上皮に覆われている部位の癌で上昇します。
PSA
前立腺癌で上昇します。前立腺肥大でも軽度上昇します。
シフラ
扁平上皮癌で上昇します。肺癌(扁平上皮癌)、各種消化器がん(食道癌、胃がん、結腸・直腸がん)、婦人科癌(卵巣癌、子宮癌)で上昇します。
ProGRP
肺小細胞がんで上昇します。
CA19-9
膵臓癌、胆嚢・胆道癌、婦人科癌(卵巣癌、子宮内膜癌)で上昇します
(LOX-index)
LOX-indexは、将来的に脳梗塞・心筋梗塞が発症するリスクを、動脈硬化が進行する前に知ることができる検査です。
自身のリスクを早期に知り、生活習慣を改善することで脳梗塞・心筋梗塞の予防につなげましょう。
(Viewアレルギー39検査)
Viewアレルギー39検査とは、血液検査でアレルギーの原因を調べる検査です。
私たちの身体ではアレルゲンごとに特有の「IgE」という抗体が産生されます。
血液中にある「IgE」量を測定することで、アレルギー症状を引き起こしている可能性のあるアレルゲン(39種類)が分かります。